ついにヴェールを脱いだ、ステージタイガーの最新作。度重なる再演に、それぞれの出演者の思いは?
違った角度から今回の公演を見つめる虎の子達の座談会の模様です。

ー 協走組曲LIVE、本番まで1ヶ月強となりました。
今稽古場ではどのようなアツい稽古が行われているんですか?
谷屋 いやぁ、もうバンバンやっとるね。
白井 まだ稽古場は夏ですよね。
石井 毎回、何枚も着替えてるもんね。
虎本 なんだかんだと1月から練習して10ヶ月か。最初は極寒(1月)の中から稽古して、もう秋なんやねぇ。
小野 こんな長くやるのは初めてやね。
虎本 これだけやってくると稽古場でも「慣れ」なんてものが存在したりしないの?
谷屋 そこは注意しているよ。…常に背中にそういうもの(演技への慣れ)が迫りながらやってる。
ー 谷屋さんなんかは序章よりずっと同じ役(ツヅキ役)をやって来ているが?
谷屋 ツヅキという役をやってきて。相手役も変わらずのままで(樋口がカナデ役)。でも台本は毎回ちょっとずつ変わっているんだよね。だから毎回僕も変えているし。今回は相手も違うしね。小野さんだし。当然変わると思うし。…僕にとって役づくりの違いなんて、画のタッチの違いのようなもの。
白井 書いているものは同じでも、表現手法が少し違う、みたいなもんですかね?
虎本 ええと、具体的に言うと?
谷屋 『機動警察パトレイバー』のOVA版と劇場版の違い みたいなもんかな?
皆 わかりにくいなっ!
虎本 全く「あるある」、とかならへんから。
石神 (一人無言でうなづく)
谷屋 そのくらいのタッチの違いなんですよ。
ー 同じく、白井さんも続けて同じ役(ハジメ役)だが? 違いはあるんですか?
白井 難しい質問ですよね。上手く言葉が見つからないんですが…ただね。同じ役は続いているんですが、毎回必ず発見はあるんですよ。だから、やってもやっても足りないんです。今回も新しい発見をできると面白みにしています。前の初通しのときなんか、凄く僕が疲れていて。どうしようも出来ないから…とりあえずカナデ(小野)を見る事だけに集中しようと思ったんです。じゃあ、違った気持ちを持ってやれたんです。ハジメの別の一面を見れた気がしたんですね。そういう気付きを大事にしたいと思うんです。
ー 小野さんは、主役のカナデを連投になるが?
小野 長く同じ作品をやる、同じ役をやる それはイコール、その役の人と付き合えるわけだから、贅沢よね。虎本の書く本が、序章から第3楽章、今回と毎回、『キーワード』が違うのよ。
皆 ああ。
小野 だから、ガラッと役づくりの核、根本が変わる。ゆえに、まったく違う役づくりになってるわ。
ー 石神さんはどうでしょう? 第3楽章時(ワタセ役)から役が変わりますが(今回はミライ役)。
石神 同じ物語でも、見える所が違いますよね。役の目線が違う。なんだか、今回で物語を多角的に捉える事が出来た気がします。ワタセの時は見守るというのを大事にしてたんですけど。今回は攻める側に回ろうかと思ってるんです。
谷屋 そうやね。レッツストーキング!やね!
石神 何を言うてるんですか!
虎本 ミライは見せ場いっぱいあるしね。
石神 僕にとっては役が変わるという事は、歩む方法が違う、だからもちろん終わり方も違うと思います。ただ、やってた役の台詞が他人の声で耳に入るのは不思議な経験ですけどね(苦笑)
皆 わかる(苦笑)
石神 ま、他の人がやってる役を見て勉強にしますよ。
虎本 まあ、僕なんかは今回ワタセ役をやるけども、どう考えても、石神より俺の方が面白いからね。
皆 (爆笑!)
虎本 冗談ではなくて、負けたくないって思ってる。同じ役をやるという事は、同劇団でも自分にしか出来ない事をしたいって思う。違いを受け入れつつも、俺ならこうする、という事は叩き付けてやりたいね。第3楽章では俺はツヅキ役をやった。今までツヅキ役は谷屋、虎本、ネコと3人やってるけど、小野さんには誰が一番良かったか聴きたいね。
谷屋 生々しいな!
虎本 そういう刺激が欲しいんだよ!
ー 一方、石井さんは、第3楽章には出ておられませんでしたが…
石井 出演していた第2楽章は別の世界感で短編だったしね。ちょっと別物かな。でも、客席から第3楽章の完成形を見て、感動したのよ。これ以上、何を完成させるのか?っていう気分で。
皆 (苦笑)
石井 だから、誰よりも新鮮やね、今。毎回稽古で気付きがあるし。しかも私は久々にタイガーでの長編にでるやん(リングリングリング以来)。台本上にも気持ちを込める台詞が散りばめられているし。一つ一つの台詞に生き様、人間が見えるから、その言葉の為に全力でやれると思うわ。
ー そういえば、今回は、第2楽章がキーポイントになるんですよね?
虎本 そうなんです。第2楽章で出たFFEE、そしてテーマソング『いつか晴れた日に』が意味を持つんです。あの唄の歌詞を捉え直して、作品をリメイクしました。歌詞で語れる所はいらないと思い、台詞を大分削除したんです。
谷屋 なるほどな。確かに。
虎本 その足りない所を、唄が、ALL SWAMPSが出してくれると信じているんです。だから、台本上では第3楽章に比べて説明が不足していると思うんです。そこをどう補ってくれるか。それが今後の課題でもあり楽しみです。まだ僕たちだけの芝居パートを練習してるだけ。今後はお芝居と唄が融合する瞬間を創って、もっとこだわっていきたいですね。だからライブハウスでの公演なんです。実は協走は最初からALLSとやりたいという所から始まったんですよ。
皆 え?
虎本 ようやくゴールにたどり着いたという感じですね。
小野 1年越しの念願の公演なんやね。
虎本 僕が思うに、ほんまに面白いものは、何回見ても面白いはずなんですよ。
谷屋 劇団四●がそうやもんね。
虎本 何回見ても笑えて、泣ける。今年はそれだけの作品を創って来たつもりです。
谷屋 僕ら、『ラマンチャの男』やね。
白井 僕らも松本幸四郎、森光子を目指していくってことで。
石神 はい、続けて見ている人にも、初めて見ている人にも楽しんでもらえるように頑張りましょう。
(稽古場付近 某所にて収録)
11月にパワーアップして再演となる協走組曲
谷屋にとっては、タッチの違いであり、
白井にとっては、新しい発見。
小野は違ったキーワードを見つけ出し新しいものを創造する。
石神は別角度から物語を補完、虎本はそんなメンバーに対抗心を燃やし、
石井は一つの台詞に魂を新しく注入する。
それぞれの思いを胸に加速する協走組曲、お楽しみに!