最後の稽古が終わりました。

今日は5回目の通し稽古。
着実に詰み上がり、よい作品になりました。
でもまだまだ改善点もあり、本番までに修正が必要。

にしても主演の2人がいい。
いい表情をしている。
やはりこの2人の物語なのだと再認識。
もちろんこの2人をそこに運ぶのは全員の仕事。
そこであらためてバランスを再構成。
もっとスピードアップしたいな、テンポ詰めたいな、逆に間を取りたいな…。
こればかりは演出の僕が外からコントロールしていく必要があります。
逆に、僕には不可能な、中にいる俳優にしかできない調整が本作には多分にあります。
あまり稽古場ブログで誰も触れませんが、この作品、かなり特殊な演出をしています。
何というか、一人一役じゃない、全員にもう一つずつ、特殊な役を演じてもらいます。
その役について、僕はほとんど演出オーダーをしていない。
俳優それぞれに場を観察させ、演技を考えさせる。
言い方も、立ち姿も、表情も俳優任せ。
僕はこれを「フィッティング」と呼んでいます。
フィット…適合する、自然に馴染ませる、という感じの演技アプローチ。
矯正ではなく、強制でもなく、俳優が内部から生み出すものをそれぞれに試しながら適合させていく。
僕は演出家として力を加えるのではなく、その場を整えたり、時間を与えるなどマネジメントに徹します。
時間はかかりますが、確実に成果は出ているように思います。
思えばこの「フィッティング」手法は役を創る上でも今回功を奏しているように思います。
本人が役に近づくだけでなく、役が本人に近づく。
時間をかけながら、役に命を吹き込む。
俳優の魅力を引き出す、僕にしか出来ない(言い過ぎか)技術。
あとは稽古場で生まれたリズムを崩さず、劇場でどうフィットさせていくか。
稽古は終わりましたが、まだ公演は始まってもいない。
幕が開くその瞬間に、一番面白いものをぶちかませるように、闘ってきます。
虎本剛